調査手法

地下水調査

●ポイント
水源確保のために井戸掘削位置を選定する場合には、周辺の地質踏査、各種の物理探査を行い、最も有望な地点を選ぶ必要がある。
山岳地域における地下水貯留層は一般に、岩盤中の割れ目や断層破砕帯の破砕ゾーン等であり、岩盤の裂か水である。
物理探査の手法としては次の方法があり、地質条件により適宜組み合わせて利用している。



◆鹿児島県土地開発公社発注による井戸工事(掘削径445mm、深度220m、仕上がり径305mm)が完成しました。

 



各調査の計画と探査計画

調査項目
地表踏査
(既存資料の収集・空中写真判読)

調査の概要
・地質構造,分布地質、断層破砕帯等を把握する ・既存資料、物理探査結果と総合的に水理構造を評価する資料とする

探査計画
調査周辺一体を広範囲に踏査するリニアメント抽出、空中写真判読結果等も参考とする
電気探査
・水平探査
・垂直探査
・二次元探査(比抵抗映像法)

調査の概要
・地下の比抵抗分布を水平・垂直分布図として把握する ・地下の比抵抗構造と地質構造より地下水脈を評価する

探査計画
探査個所、側線は、地質構造を踏まえて計画する二次元探査では、断層の傾きも検出可能で有効
放射能探査

調査の概要
・地表面の自然放射線量を平面的に把握する ・自然放射線量は地下深部から岩盤の開口した割れ目や裂か帯を通じて上昇するため、このような箇所では周囲より高い値として検出される

探査計画
調査地点は、面的にグリッド状に設定 地表部に未固結層が堆積している箇所では、地下からの放射線が遮断されて検出が困難
重力探査

調査の概要
・地下の重力分布を平面的に把握する ・重力分布より断層破砕帯等の大きな地質構造を把握する

探査計画
調査地点は、面的にグリッド状に設定 規模の小さい地質構造の検出は困難
孔内試験

調査の概要
・掘削したボーリング孔内において電気検分を行い、比抵抗分布より透水(帯水)ゾーンを把握する ・揚水試験より揚水量(限界揚水量)を把握する

探査計画
井戸仕上げの設計施工の礎資料とする ストレーナ設置位置ポンプ位置ポンプ容量等


◎電気探査による井戸掘削候補地点調査例

2016年12月21日

地下空洞調査(防空壕等)

●ポイント
空洞調査は、先ず空洞規模や現地条件等を考慮し、非破壊的に実施できる物理探査(地下レーダー探査、二次元電気探査、浅層反射探査法、マイクログラビティ探査等)を適切に提案・実施し、空洞位置の特定を行います。
次に検出された異常個所でボーリング調査を行い、各種孔内計測機器を用いて空洞の内部状況や規模(幅、高さ、長さ、方向)を正確に計測します。
また、得られた各調査結果を取りまとめ、空洞の充填量を求めるとともに対策工の提案を行います。



◆下記調査(特殊地下壕対策事業 坂之上一丁目地区 調査業務)を施工しました。





各調査の計画と探査計画

調査項目
地下レーダー探査

調査の概要
・地下の反射記録を測定する・反射波の乱れから空洞を測定する・地表面の凹凸が激しいところは無理

探査計画
空洞推定箇所に測線を設定
電気探査(比抵抗映像法)

調査の概要
・地盤の比抵抗分布を測定する・空洞が存在する場合は、高い値が検出される

探査計画
空洞推定箇所に測線を設定
重力探査

調査の概要
・地下の重力異常個所(密度構造の違い)を測定する・空洞が存在する場合は、周囲より低重力として検出される

探査計画
調査範囲を5m~10m間隔にグリッド状に測点を設定
ジオトモグラフィー
レーザープロファイラー

調査の概要
・ボーリング孔間及びボーリング孔と地表間で測定 (詳細調査)

探査計画
空洞の規模、広がりを把握
ボーリング調査
サウンディング

調査の概要
・空洞の位置が深い場合(10m)や硬い地盤の場合は、ボーリング調査が主体・ボーリングの掘削孔径は80~100mm程度

探査計画
物理探査の結果から異常箇所を数ヶ所抽出し、空洞の確認調査を行う


ERROR!!

◎地下レーダー探査による地下壕検出記録例



◎孔内レーザー距離計による地下壕の形状把握



◎孔内CCDカメラによる地下壕内部の状況撮影



◎電気探査(比抵抗映像法)による空洞個所推定例(断面図)



◎重力探査による空洞個所推定例(平面図)


2016年12月21日

トンネル調査(比抵抗映像法)

●ポイント
 トンネルの設計・施工のための地質調査は、計画トンネル沿いの地質分布状況・地質構造に応じて調査方法、数量を決める。 各種の調査結果は、総合的に地質解析を行い地山評価を行う必要がある。

●主な調査方法
 ・地表地質調査 ---- 地表状況、岩質、地質構造、断層破砕帯等を把握
 ・ボーリング調査 -- 地質・岩質状況、地下水状況を直接把握
 ・弾性波探査 ------ 速度値より、地質・岩盤状況・断層破砕帯を把握
 ・電気探査 -------- 比抵抗分布より、地質・岩盤状況・断層破砕帯を把握
 ・湧水圧試験 ------ 地山の湧水圧・湧水量等の地下水に関する情報を把握
 ・孔内載荷試験 ---- 地山の弾性係数、変性係数を把握
 ・室内岩石試験 ---- 岩石の力学的性質・物理的性質を把握




各調査の計画と探査計画

調査項目
地表地質調査

計画範囲・位置
・トンネル計画路線沿い(縦断方向・横断方向)・坑口部は緩い土砂が厚く分布していることもあり詳細に踏査

数量(目安)
トンネル計画路線周辺(横断方向100~200m程度)
ボーリング調査

計画範囲・位置
・トンネル坑口部。・規模の大きい断層破砕帯部・土かぶりの薄い箇所・掘削速度は、原則として施工基面以深3m程度確認・坑口部に土砂が厚く分布する場合は、水平ボーリング実施

数量(目安)
坑口部に1~2本程度。地質的問題箇所でも実施
弾性波試験

計画範囲・位置
・トンネル計画路線沿いに実施・坑口部(横断方向)に設定・規模の大きい断層破砕帯、変質帯が分布する箇所・地表部に溶岩等が分布する場合は不向き

数量(目安)
坑口部は100m程度設定 受振点間隔は原則として5m間隔
電気探査

計画範囲・位置
・トンネル計画路線沿いに設定・坑口部(横断方向)に設定・地下水の分布と状況を把握できる ・未固結地山、シラス地山、変質帯地山では特に有効

数量(目安)
探査範囲は、トンネル施工基面までを十分にとる
湧水圧試験

計画範囲・位置
・地下水の多い地山で実施・トンネル天盤上部付近で実施

数量(目安)
1ボーリング孔につき2箇所で実施
孔内水平載荷試験

計画範囲・位置
・トンネル施工位置付近で実施

数量(目安)
1ボーリング孔につき2箇所で実施
室内岩石試験

計画範囲・位置
・トンネル施工位置付近のコア資料を利用・一軸圧縮試験、超音波伝播速度(P波、S波)、単位堆積重量試験

数量(目安)
1ボーリング孔につき2箇所程度 地質毎、岩級区分毎


◎電気探査(比抵抗映像法)による探査例

2016年12月21日

トンネル調査(高精度弾性波探査)

●ポイント
 弾性波探査は、弾性波動の伝搬特性を利用して地下構造を把握する手法で、ダム、トンネル等の土木地質調査において広く利用されている。
弾性波探査屈折法は、人工的に地震波を発生させ、屈折してきた波を測定・解析することにより地下の速度層構造を求める手法である。
解析手法としては、一般的には「萩原の方法」が用いられている。この「萩原の手法」は、速度層構造を層構造と仮定して解析を行っているために、層構造ではなく、深度とともに徐々に速度が増加するような地盤や同一層であっても速度が水平方向に大きく変化しているような地盤等の複雑な地下構造に対しては、正確に速度構造を求めることが困難であつた。
このような中で、近年、コンピュータの発達とともに、「トモグラフィ的解析」手法が開発され、地下の速度層構造を従来の「萩原の手法」より詳細に求められる解析手法が開発され利用されている。


 

[従来の弾性波探査解析方法(萩原の方法による解析)]

萩原の方法は、測定結果得られた相対する往復走時曲線から速度走時曲線(はぎとり線)を求め、この曲線から速度層構造を解析する手法である。
この解析は、速度層構造を成層構造と仮定して解析を行うため、複雑な地盤構造の場所では、正しい速度構造を求めることは困難である。



[高精度弾性波探査解析方法(トモグラフィ的解析)]

トモグラフィ的解析とは、まず、ある速度層構造の初期モデルを作成し、コンピュータによる反復計算によってモデルに対する理論的なデータ(理論走時)を作成する。
次に、この理論走時と実際に観測されたデータ(観測走時)を比較し、両者が許容精度内で一致するまでモデルを順次修正するという方法である。
この方法は、従来の解析手法と異なり、地盤を層構造と仮定しないので、複雑な地盤構造の場所でも精度よく速度構造を求めることができる。

2016年12月21日

土壌汚染・地下水汚染調査

近年、工場跡地等の再開発等に伴い重金属、挿発性有機化合物等による土壌・地下水汚染が顕在化し、件数も年々増加してきている。
また、除草剤等の農薬や肥料、有機塩素系溶剤等いろいろな物が地中に廃棄・散布され、その結果、これらの物質が地下水中に浸透し、地下水・土壌を汚染させている。

[土壌汚染対策法(案)の背景及び経緯]

 土壌汚染は、近年、企業の工場跡地等の再開発等に伴い、重金属、揮発性有機化合物等による汚染が顕在化してきている。これらの有害物質による土壌汚染は、放置すれば人の健康に影響を及ぼす懸念があるが、現在、土壌汚染対策に関する法制度がなく、法整備の社会的要請が高まっている。

[土壌汚染対策法(案)の目的]

「土壌汚染対策法案」は、土壌の特定有害物質による汚染状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的とする」

[土壌汚染による健康被害の防止措置]

①都道府県知事は、指定区域内の土地の土壌汚染により、人の健康被害が生じるおそれがあると認める時は、当該土地の所有者等に対し、汚染の除去等の措置を講ずることを命令することができる。

②汚染原因者が明らかな場合であって、汚染原因者に措置を講じさせることにつき土地の所有者等に異議がないときは、汚染原因者に対し、汚染の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。

③命令を受けて土地の所有者等が汚染の除去等の措置を講じたときは、汚染原因者に対し、これに要した費用を請求することができる。

④指定区域内において土地の形質変更をしようとする者は、都道府県知事に届け出なければならない。都道府県知事は、その施行方法が基準に適合しないと認める時は、その届出をした者に対し、施行方法に関する計画の変更を命ずることができる。

[特定有害物質]

「特定有害物質」は、土壌環境基準のうち、銅を除く26項目で、これらに溶出基準を定めるほか、直接暴露リスクのある重金属9項目に含有基準を定める方針である。

重金属(9項目):総水銀・カドミウム・鉛・枇素・六価クロム・フッ素・ホウ素・セレン・シアン

[土壌・地下水汚染の機構解明調査・浄化対策の流れ]

一般的には、phase1,phase2,phase3の3段階に分けて行われる。

phase1
対象地周辺の現在と過去の土地利用状況、地形・地質と地下水状況及び有害物質の使用履歴の把握等を調べ、現地調査とヒアリングから土壌汚染の可能性を評価する。phase1で汚染の疑いがある場合には、次の調査を行う。
phase2
対象地について、実際にボーリング調査や化学分析を行い、汚染の平面的な分布と深度を把握する。
phase3
対象地に適した浄化工事の対策工法を検討し、実施する。


[汚染の形態と調査・対策・対応の概要]

①地下水汚染の判明
  契機:地下水監視等により汚染・汚染井戸が判明
  対応:関係地域を設定し、地下水汚染源の調査・究明と対策の検討・実施
②現況把握
  契機:事業活動の状況からみて汚染の恐れがある場合に、事業場の移転、跡地再利用等の土地改変等が判明
  対応:対象地全域について汚染の有無調査を実施。汚染が判明した場合には都道府県等に連絡。所要の対策を実施
③土壌・地下水汚染の判明
  契機:土壌・地下水汚染が判明
  対応:汚染を発見した旨を都道府県等に連絡。発見した汚染の周辺を調査

2016年12月21日

埋設農薬(残留性有機塩素系農薬)調査

[残留性有機塩素系農薬の背景及び特徴]

 残留性有機汚染物質(POPs)は、毒性、残留性等に問題があったため、我が国においては、昭和46年に製造の禁止、使用制限等がなされ、余った農薬は地中埋設により処理されてきた。
 その後、放置されてきたが、2001年5月のストックホルムで開催された外交会議において、POPs条約が採択され、各国において、POPsの製造・使用の原則禁止・適正な管理・適正な処分等の早急な取り組みが求められた。
 POPsには農薬、殺虫剤、工業化学物質等があり、農薬に使用されていたものは、DDT、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン、へプタクロル等である。

POPsの特徴は、次のとおりである。

①有害性がある。
 発ガン性や神経障害、免疫毒性、ホルモン異常などの有害性がある。
②低水溶性・高脂溶性。
 脂肪に溶けやすいため、生物の脂肪組織に濃縮されやすい性質を有する。
③難分解性で環境中への残留性が高い。
 化学的安定性を求めて作り出されるため、環境中に放出されても分解されにくく、長期間環境中に残留する。
④大気や海洋により長距離を移動する。
 POPsの多くは、半揮発性有機化合物であるため、空気中に蒸発して拡散しその後、大気循環で移動し、冷たい空気により冷却されて凝縮され地上に降下する。

[埋設農薬の調査・検討方法]

調査・検討は、大きくは次の3項目よりなる。

 (1)埋設位置・形態の調査
 (2)周辺地盤への漏洩確認調査
 (3)埋設農薬の処理対策の検討

各項目の調査手法には次の方法がある。

(1)埋設位置・形態の調査

①資料・聞き取り調査
  埋設時の記録の収集を行うとともに、関係者からの聞き取り調査を行い埋設位置、埋設形態、埋設量等を概略把握する。
②周辺土地利用、水文地質状況調査
  現地調査により、埋設地点周辺の現在の土地利用状況を把握する。また埋設地点周辺の地層の分布状況、河川・地下水の状況等を調査する。
③埋設分布調査
  資料、聞き取り調査の結果を基に、地表から物理探査により埋設物の位置と形態を探査する。
  物理探査の手法としては、地下レーダー探査、磁気探査、電気探査等があり、埋設地点の地層・地下水分布等を考慮し適切な探査法を選定する。
④試掘確認調査
  物理探査により埋設農薬と予想される箇所が検出されたら、実際に試掘調査を行い埋設農薬を確認する。試掘は、数カ所で行う。

(2)周辺地盤への漏洩確認調査
   埋設農薬の周辺への汚染の有無及び汚染がある場合の範囲の調査を行う。

①ボーリング等による鉛直調査
  ボーリング、簡易土壌採取機を用いて試料採取を行う。
  調査地点は、地盤・地下水状況等を考慮し、最低3箇所程度行う。
  また、サンプリングは、1孔当たり、3試料程度とする。
②土壌・地下水分析
  ボーリング調査により採取した試料を用いて土壌・地下水分析を行う。
  分析は、「農薬等の環境残留実態調査分析法(環境庁 水質保全局)」に準拠して行う。

(3)埋設農薬の処理対策の検討

①埋設農薬掘削方法の検討
  「埋設位置・形態の調査」、「周辺地盤への漏洩確認調査」結果を基に、埋設位置、埋設形状および埋設量の推定を行い埋設農薬の掘削方法に関する提案、設計を行う。
②モニタリングの検討
  周辺汚染の処理対策を実施する場合、必要に応じて施工後のモニタリングを行う。

2016年12月21日

ため池老朽化調査

[ため池の機能診断と改修]

 長年月を得たため池は、老朽化等に伴い、地震、豪雨などの外的により災害が懸念されている。特に、近年では、ため池周辺の宅地化が進み、下流への二次災害が懸念される場合もあること、既存のため池は、耐震設計を行っていないものが多くあること等から安全性の照査、改修が必要となってきている。
 要改修の必要性のあるため池の判断は、次のような事項である。

①.堤体、基礎地盤からの漏水量
 どの程度の漏水量があれば危険であるかは、漏水箇所、堤体の土質などに依存するために一概に決めることは困難である。平均的な規模のため池では、堤体上の透水係数が1×10^3cm/s程度の時の漏水量を想定して、目安として60Ⅰ/min/堤頂長100mを基準としている。
また、浸潤線が下流斜面の高いところに出ている場合は、堤体の安全性にとって問題であり、漏水量と合わせて改修の必要性を判断する必要がある。

②.堤体のクラックおよび変形
 クラック、余裕高不足、不安定な堤体断面、洪水吐の機能低下、能力不足、および取水施設の破損、機能低下などが判断事項となり、これらを総合的に評価して改修の必要性、緊急性を判断する。この中で、特に堤体を横断するクラックについては注意深く原因を調査する必要がある 。



[改修の緊急性のあるため池]

 緊急性については、平成12年2月25日付けで農林水産省構造改善局(現農村振興局)より「農業用ため池緊急整備計画の作成について」の通達がなされ、その中で、事業実施の緊急性を明らかにした指標が示された。この指標では、従来の構造的老朽化の指標に加えて、農業経営への影響度、下流への被害程度の項目を加え、項目別に点数化してため池整備の緊急性、必要性を客観的に判断している。
 また、緊急性が高いと判断されるため池の改修を行う場合には、地震動に対する堤体の損傷、液状化等についての耐震性を考慮した設計を行う必要がある。

2016年12月21日

SDL水位計による地下水位調査

[地下水位観測事例]



[SDL水位計現地設置並びにデータ収録状況]



[小型絶対圧水位計 ~ S&DL mini ~]

2016年12月21日