[残留性有機塩素系農薬の背景及び特徴]
残留性有機汚染物質(POPs)は、毒性、残留性等に問題があったため、我が国においては、昭和46年に製造の禁止、使用制限等がなされ、余った農薬は地中埋設により処理されてきた。
その後、放置されてきたが、2001年5月のストックホルムで開催された外交会議において、POPs条約が採択され、各国において、POPsの製造・使用の原則禁止・適正な管理・適正な処分等の早急な取り組みが求められた。
POPsには農薬、殺虫剤、工業化学物質等があり、農薬に使用されていたものは、DDT、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン、へプタクロル等である。
POPsの特徴は、次のとおりである。
①有害性がある。
発ガン性や神経障害、免疫毒性、ホルモン異常などの有害性がある。
②低水溶性・高脂溶性。
脂肪に溶けやすいため、生物の脂肪組織に濃縮されやすい性質を有する。
③難分解性で環境中への残留性が高い。
化学的安定性を求めて作り出されるため、環境中に放出されても分解されにくく、長期間環境中に残留する。
④大気や海洋により長距離を移動する。
POPsの多くは、半揮発性有機化合物であるため、空気中に蒸発して拡散しその後、大気循環で移動し、冷たい空気により冷却されて凝縮され地上に降下する。
[埋設農薬の調査・検討方法]
調査・検討は、大きくは次の3項目よりなる。
(1)埋設位置・形態の調査
(2)周辺地盤への漏洩確認調査
(3)埋設農薬の処理対策の検討
各項目の調査手法には次の方法がある。
(1)埋設位置・形態の調査
①資料・聞き取り調査
埋設時の記録の収集を行うとともに、関係者からの聞き取り調査を行い埋設位置、埋設形態、埋設量等を概略把握する。
②周辺土地利用、水文地質状況調査
現地調査により、埋設地点周辺の現在の土地利用状況を把握する。また埋設地点周辺の地層の分布状況、河川・地下水の状況等を調査する。
③埋設分布調査
資料、聞き取り調査の結果を基に、地表から物理探査により埋設物の位置と形態を探査する。
物理探査の手法としては、地下レーダー探査、磁気探査、電気探査等があり、埋設地点の地層・地下水分布等を考慮し適切な探査法を選定する。
④試掘確認調査
物理探査により埋設農薬と予想される箇所が検出されたら、実際に試掘調査を行い埋設農薬を確認する。試掘は、数カ所で行う。
(2)周辺地盤への漏洩確認調査
埋設農薬の周辺への汚染の有無及び汚染がある場合の範囲の調査を行う。
①ボーリング等による鉛直調査
ボーリング、簡易土壌採取機を用いて試料採取を行う。
調査地点は、地盤・地下水状況等を考慮し、最低3箇所程度行う。
また、サンプリングは、1孔当たり、3試料程度とする。
②土壌・地下水分析
ボーリング調査により採取した試料を用いて土壌・地下水分析を行う。
分析は、「農薬等の環境残留実態調査分析法(環境庁 水質保全局)」に準拠して行う。
(3)埋設農薬の処理対策の検討
①埋設農薬掘削方法の検討
「埋設位置・形態の調査」、「周辺地盤への漏洩確認調査」結果を基に、埋設位置、埋設形状および埋設量の推定を行い埋設農薬の掘削方法に関する提案、設計を行う。
②モニタリングの検討
周辺汚染の処理対策を実施する場合、必要に応じて施工後のモニタリングを行う。